『 THE MOOD 』

#下着再考

最も肌に近い場所に、毎日必ず身につける存在である下着。
その日に何を身につけるか、それ次第で気持ちはぐっと変化するもの。
誰にも知られず、こっそりと自分ひとりで。
世の中の幻みたいな定説ではなく、他人の目でもなく、
自分が何を心地よいのか、どんなものに心がときめくのか、
もう1度自問してみると、その日にどんな下着を身につけたいのか分かるはず。
ジュエリーのように気持ちが上がり、お守りのように気持ちが強く安らかになる。
下着がそんな存在でありますように。

Direction / Edit / Text : Maki Kakimoto

「レースの靴下」 Vol.6

記憶力が弱いらしく、幼小中高大の記憶がとても薄い。
よっぽど強烈な喜怒哀楽はいくつか覚えているけれど、その数は少なくどれもやや曖昧。記憶力のいい友人から、私との日常の何気ない思い出などを
話されると驚愕するし、聞いても思い出せないことばかり。
そんな私が覚えている幼少期の数少ない思い出のひとつに、レースの靴下がある。
足首丈で折り返した部分にレースがあしらわれた靴下。それがとても好きで、たまに眺めたりしていたし、履いている時は嬉しくちょっと誇らしかった。
もしかしたら、履いているときは所作まで少し変わっていたんじゃないかな。それくらい、履いているときは気分が違ったことをハッキリと覚えてる。

靴下によってレースとの歴史が始まり、その年齢ごとにチープなものからヴィンテージまでそれはもう様々なレースと付き合ってきた。
そうして、40 代の今はどんなレースを好むのか。今は大袈裟ではない少しクラシカルなレースに 1 番惹かれるかもしれない。若くはなくなってきたことで似合うものに変化があり、その一方で目は肥え、お金にほんの少しだけ余裕はできて、情報と経験は増え、けれど買い物欲は落ち着いてきた今。
品が良くて、レース特有の甘さは残りつつも洗練されたシャープさもある、繊細なレースがさりげなくあしらわれていて欲しい。
「美味しい肉を少しだけで良くなったよね」「靴とジュエリーはいいものじゃないと」「男性はお洒落より清潔感が重要よね」(あれ?これだけちょっと違う話な気も)という 40 代たちがよく言う台詞と、私が今惹かれるレースの話は近い気がする。普段年齢を意識することはほぼ無いけれど、重ねた月日によって感じることは確実に変化していて、それを認めて向き合い疑いながらアップデートしていく作業はとても楽しい。
そうして好むレースは変化していくけれど、今でもレースを着ると嬉しくなる気持ちはあの日のレースの靴下と変わらないのかも。

何世紀も続くフランスの名門レースメーカーによる卓越した技によって実現したコットン混のコードレース。レースと組み合わせた素材は、極細糸を使用している肌あたりが柔らかな 100% コットン。品のある艶やかな素材とコードレースの組み合わせは、大人の女性が求めるバランス感。洋服からのぞいても全くいやらしさはなく、部屋着として 1 枚でも着てもいい。

柿本真希 | Maki Kakimoto
エディター・ライター・ディレクター
編集、ライター。衣食住子と幅広く編集・原稿・連載・インタビューを担当。
2年間のアシスタント期を経て2001年独立。2012年からニュージーランドにて母子留学を2年半。
2014年秋に帰国後、編集・ライターに加え、ディレクション・キャスティングなど多岐にわたって活動中。